もやもや病

こんにちは、頭痛外来のある福岡県糟屋郡新宮町の「しろうず脳神経外科」です。

 

もやもや病という言葉を知っていますか? 

2002年度までは“ウィリス動脈輪閉塞症”が日本における正式な呼び名でしたが、今ではもやもや病が正式な呼び名となっています。

私は九州大学大学院の時に、もやもや病についての研究を行っていました。(研究の論文はこちら)

ありがたいことに九州大学脳神経外科同門会からも表彰いただきました。

今回は研究していたもやもや病について詳しく見ていきたいと思います。

 

 

もやもや病とは

もやもや病とは、内頸動脈という太い血管が細くなる原因不明の病気です。太い血管が細くなっていくので、血流を補おうと細い血管が発達していきます。その血管がもやもやとした血管に見えるため、もやもや病と名付けられました。アジアで多く、日本では厚生労働省の指定難病となっています。

(難病情報センターより抜粋)

 

原因

もやもや病の原因は現在も解明されていません。しかし、遺伝子変異が関与しているのではと言われており、RNF213という遺伝子が感受性遺伝子として特定されています。

人口10万人あたり6-10人程度と少なく、10歳以下の小児と30〜40歳代の成人に発症しやすいです。

 

どのような症状が起きるの?

太い血管が細くなることで脳に送られる血液が不足すると脳の虚血が起こり、また、その分の血液を送ろうともやもや血管に負担がかかり、血管がやぶれると脳の出血を起こします。

 

虚血の症状手足の麻痺、しびれ、ろれつがまわらない、言葉がうまく出てこないなどがあげられます。

一時的に血流が不足し、その後元に戻ると症状は改善する一過性脳虚血発作で済む場合があります。

しかし、進行してひどい血流不足が続くと、脳細胞が死んでしまう脳梗塞という状態になり、症状は遺ってしまいます。

 

出血の症状突然の頭痛、意識障害、手足の麻痺、しびれなどがあげられます。重症の場合は命に関わることもあります。

小児は虚血が多く、成人は虚血出血もきたします。

また、その他の症状として頭痛やけいれん、小児では知能低下などもあります。

 

遺伝するの?

もやもや病は必ずしも遺伝する病気ではありませんが、家族内発症がみられることがあります。
家族内発症率は10~20%程度で、両親や兄弟姉妹、いとこなどに発症している可能性があります。

また、もやもや病に関連した遺伝子RNF213が発見されていますが、これは病気の原因遺伝子ではなく、発症しやすくなる“感受性遺伝子”と考えられています。

治療法

脳血管が徐々に詰まっていくのを改善させる治療法はありません。

脳血流の不足が続いている場合は脳血流の不足を補う手術を行ないます。

具体的には頭皮にある血管を脳の表面の血管に直接つなげるバイパス術(直接血行再建)頭部の筋肉や血管、脳や頭蓋骨を包んでいる膜などを脳表に接着させ、筋肉などから血流が入るのを期待するバイパス術(間接血行再建)があります。

手術により脳の血流不足がなくなると、脳梗塞を起こさないだけでなく、もやもや血管もその役目を終えてなくなっていくので、もやもや血管がやぶれて脳出血を起こすことも少なくなります。

脳梗塞が発症した場合には、血管がつまらないよう血液をサラサラにする抗血小板剤という薬を使用することがあります。しかし、もやもや病は脳出血も起こす病気ですので、慎重な治療が必要です。

 

日常生活で注意することはある?

小児の場合では、症状がしばしば出現する時は、激しい運動楽器などの演奏は控えましょう。

症状がしばしば出現する際は、なるべく早期に手術治療を検討することをお勧めします。
治療後や、症状が安定している場合は、過度な生活動作制限の必要はありません。

 

もやもや病は厚生労働省の指定難病となっています。診断確定のためには血管造影検査が必要となります。

もやもや病についてご不明な点、相談等ございましたら当院までお気軽にお問い合わせください。

 

2024年11月16日