こんにちは、毎日頭痛外来をしている福岡県糟屋郡新宮町の「しろうず脳神経外科」です。
皆さんは群発頭痛という言葉を知っていますか?
数ヶ月から数年に1度、1-2ヶ月間ほど毎日のように片方の眼がえぐられるほどの激しい頭痛が起こる方は群発頭痛かもしれません。
群発頭痛とは
群発頭痛は慢性頭痛のうちのひとつです。
慢性頭痛としては主に片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛に分かれます。
群発頭痛はこの3つの中でも発症率が特に低い頭痛で、有病率は0.056%から0.4%程度(1000人に1人程度)と報告されています。
特に20-40代の男性で多く見られます。
群発頭痛の症状は、片方の眼の奥がえぐられるような激痛が起こります。
眼の充血、涙や鼻水が止まらないほどの症状を伴うこともあります。
自殺頭痛という別名もあるほどの頭痛で激痛です。
症状は1-2ヶ月間ほど毎日のように起こり、この期間を群発期と呼びます。
群発期が終わると数ヶ月から数年にわたって痛みがない時期が続きます。
群発頭痛はなぜ起きる?
群発頭痛が起こる原因について、はっきりとした理由がまだわかっていません。
いくつかの説が報告されています。
・視床下部説
群発頭痛は夜間に頭痛が起こることから概日リズムの障害が関連していると考えられています。
メラトニンなどの概日リズムを調整するホルモンに異常が生じたり、視床下部という概日リズムを調整する部位の血流が異常亢進することで群発頭痛が起きるとされています。
しかし、実際の頭痛発症時のMRI画像で視床下部の血流が亢進した状態で頭痛が軽快傾向に向かうなどの矛盾点があったり、視床下部を電気刺激して血流を増やすような状態にしたところ頭痛が緩和されるという報告もあることから視床下部を原因とする説の立証は十分ではありません。
・三叉神経と血管との関係説
三叉神経が刺激され血管拡張が起こることが頭痛の原因とする説です。
しかし、これも三叉神経を切除したような状態でも頭痛が生じることや頭痛時の血管拡張が観察できないことから立証は十分ではありません。
・内頸動脈説
内頸動脈やそれが取り囲む海綿静脈洞に炎症が生じるという説です。
しかし、実際に頭痛時にその炎症を証明することが困難であり、立証は不十分です。
・ニューロンネットワークの失調
三叉神経と視床下部までに至る経路の神経伝達物質の流れのネットワークに失調がおこるという説です。
しかし、これもはっきりとした立証はできていません。
いくつか説をあげましたが、どれも立証はできていないため、原因が明らかになっていないのが現状です。
市販薬は効きにくい?
市販薬は基本的に効きません。
多少の痛みは和らぐかもしれませんが、診断がついているのであれば迷わず病院を受診して薬を処方してもらうのが良いでしょう。
群発頭痛の診断と治療
治療は主に2種類あり、群発期の治療と群発頭痛の予防に分かれます。
・群発期
高濃度の酸素吸入が昔から有効とされています。
酸素を吸入することで80%の方で改善が見られたという報告があります。
一番手軽な治療法としてはリドカインという表面麻酔薬をスプレーで鼻粘膜に散布する方法です。
これは30%くらいの方で改善がみられます。
同様の方法として片頭痛で保険適応になっているスマトリプタンの点鼻を発作時に痛い方と反対側の鼻孔にスプレーする方法があります。
また、頭痛発作が激烈な初期の2週間くらいに限り、神経や脳血管の腫れをとる作用を持つ副腎皮質ホルモンを併用することもあります。
・群発頭痛の予防
神経細胞膜の安定化作用のあるベラパミル塩酸塩(ワソラン錠)や、大脳皮質の過敏性を抑える効果のあるバルプロ酸ナトリウム(デパケン錠、セレニカ錠)などを患者さんの症状に合わせて適宜処方します。
できる限り群発頭痛のリスクを下げるためには、アルコールの摂取を控えることが有効です。
また、熱いお風呂やサウナ、辛い食事、激しい運動なども控えましょう。
また、自律神経のバランスを崩さないように毎日できるだけ決まった時間に起床、就寝するなど、規則正しい生活を心がけることが基本となります。
発作が起こりそうになったら、窓を開けて深呼吸を繰り返しましょう。
また、痛むところを冷やすことで多少痛みが和らぎます。
それでも我慢できない場合は、病院を受診しましょう。
群発頭痛は毎日激しい頭痛が来てつらいものです。
くも膜下出血や脳出血なども同様に我慢できないほどの痛みが生じます。
そうした鑑別のためにも、我慢できないような痛みが生じた場合は、一度当院へご相談ください。