うつ病の物忘れと認知症の違いとは?研究からわかる見分け方と受診の目安

こんにちは、毎日もの忘れ外来をしている福岡県糟屋郡新宮町「しろうず脳神経外科」です。

 

「最近物忘れが増えた」「もしかして認知症かも…」と不安に思う方は少なくありません。
実は、うつ病でも物忘れのような症状が出ることがあります。医学的には「仮性認知症」と呼ばれることもあり、認知症と区別がつきにくいケースがあります。

この記事では、研究データを踏まえながら、うつ病の物忘れと認知症の違いをやさしく解説します。

 

 

うつ病でも物忘れは起こる?

 

うつ病といえば「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった症状がよく知られています。
しかし、実際には記憶力や集中力にも影響することがわかっています。

厚生労働省の調査では、うつ病の方の約3〜4割に「記憶障害」や「注意力の低下」が見られると報告されています。
そのため、「思い出せない」「ぼんやりしてしまう」という症状が、認知症の物忘れと間違えられることがあるのです。

 

うつ病による物忘れの特徴

 

  • 忘れてしまったことを本人が強く自覚している

  • 「また忘れた」と落ち込み、不安が大きい

  • 集中できないことが原因で「覚えられない」ことが多い

  • 気分の落ち込みや不眠、食欲低下などが一緒にみられる

  • 適切な治療を受ければ改善することが多い

うつ病の男性のイラスト

認知症による物忘れの特徴

 

一方、認知症は脳の神経細胞の障害によって起こるため、性質が異なります。

  • ・物忘れに本人の自覚が乏しい

  • 「ご飯を食べたこと」など直前の出来事を忘れてしまう

  • 時間や場所、人の名前がわからなくなることがある

  • お金の管理や料理、買い物など日常生活に支障が出る

  • 少しずつ進行していく

アルツハイマー型認知症では、患者さんの80%以上に「エピソード記憶(出来事の記憶)」の障害が見られると報告されています。

 

うつ病と認知症の違いのまとめ

 

特徴 うつ病による物忘れ 認知症による物忘れ
自覚 忘れたことを本人が強く意識して落ち込む 本人はあまり気づかない
原因 集中力・注意力の低下 記憶をつかさどる脳細胞の障害
経過 適切な治療で改善することが多い 徐々に進行し悪化する
併発症状 気分の落ち込み、不眠、食欲不振など 日常生活に支障が出る

 

医療機関で行われる検査

 

医師は問診だけでなく、次のような検査を組み合わせて見分けます。

  • ・MMSE(認知機能検査):30点満点で記憶や見当識を評価

  • ・MoCA:軽い認知機能低下(MCI)の検出に有効

  • ・PHQ-9 や HAM-D:うつ症状の重症度を評価

これらを参考に、「うつ病による一時的な物忘れ」か「認知症による進行性の物忘れ」かを総合的に判断します。

 

受診の目安

 

  • 気分の落ち込み・意欲低下・不眠と物忘れが一緒にある → 心療内科・精神科へ

  • 日常生活に支障が出る物忘れが続いている → 脳神経外科・神経内科へ

 

まとめ

  • うつ病でも物忘れは起こり、認知症と間違えられることがある

  • ・うつ病は「自覚が強い・治療で改善する」

  • ・認知症は「自覚が乏しい・進行して悪化する」

  • 迷ったときは専門医での検査が大切

物忘れが気になる方は、どうぞ一人で悩まずに当院へご相談ください。

若年性認知症のイラスト

 

参考文献

  1. 1.厚生労働省「うつ病の実態と治療に関する報告」

  2. 2.American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition (DSM-5).

  3. Petersen RC, et al. Mild Cognitive Impairment: clinical characterization and outcome. Arch Neurol. 1999;56(3):303-308.

  4. 3.Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446.

 

2025年08月27日