妊娠と片頭痛

こんにちは、毎日頭痛外来をしている福岡県糟屋郡新宮町の「しろうず脳神経外科」です。

 

片頭痛は元々女性に多く、エストロゲン(卵胞ホルモン)の変化にって、脳内のセロトニンやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という神経伝達物質のバランスが影響を受けます。

その結果、脳の血管が拡張したり、神経に炎症が起こることで片頭痛としてみられます。

頭痛のイラスト

片頭痛は30〜39歳で最も多く、妊娠や出産の時期と重なってきます。妊娠がわかった時、片頭痛の治療や飲んでもいい薬はあるのでしょうか。今回は妊娠の際の頭痛について見ていきたいと思います。

「妊娠」のイラスト文字

 

妊娠で片頭痛は起こる?

片頭痛は妊娠初期に多いとされています。

これは、もとから片頭痛を持っている方が、妊娠によって女性ホルモンの分泌量が増えることで自律神経が乱れ、頭痛が起こるためです。

ただ妊娠した片頭痛患者の80%以上で片頭痛発作が軽減あるいは消失します。

そのため、妊娠中に片頭痛が問題になることはあまり多くありません。

最も問題になるのは、妊娠判明までに、知らずに服用してしまった片頭痛治療薬が、胎児に及ぼす影響(催奇形性)です。

一般的に薬とは関係なく新生児の3~5%に小奇形を含めた奇形の自然発生が認められています。

予防薬を除けば、片頭痛治療薬で胎児に奇形を起こすことが報告されている薬はないため、予防治療中でなければ過剰な心配をする必要はありません。

 

妊娠時期と催奇形性

どの時期に内服した薬が胎児に影響を与えるのでしょう?

元気な妊婦さんのイラスト

妊娠中の薬物服用と催奇形性に関しては、まず最終月経開始日を1日目として計算して、33日目までに服用された薬については、その種類を問わず胎児に対し影響がないと言われています。

・それ以降から妊娠7週末までは、主要器官が分化するため、催奇形因子に対し最も敏感な時期に当たります。

この時期に催奇形性のある薬を飲んだ場合が問題になります。

・妊娠8週から妊娠15週末までは、主要器官の発生は終了していますが、顔面や性器の分化が続いている時期で、薬剤の種類によっては問題となってきます。

・妊娠16週以降は器官の分化は完了しているため、催奇形性は問題になりませんが、薬による胎児機能障害(胎児毒性)が問題になります。

 

片頭痛治療薬の催奇形性

  • 鎮痛薬
  • 消炎鎮痛剤については、催奇形性の報告はありません。
  • 妊娠初期から中期にかけては、原則としてどの消炎鎮痛剤でも使用できます。
  • しかし、添付文書上で妊娠中禁忌とされているのが、インドメタシン・ジクロフェナック・メロキシカムです。
  • その他の消炎鎮痛剤は、治療の有益性が危険性を上回るときのみ投与可とされています。
  • 一番安全に使用できるのがアセトアミノフェン(カロナール)となっています。
  • 頭痛が出た際は、まずはアセトアミノフェン(カロナール)を飲むことをお勧めします。

 

片頭痛治療薬(トリプタン)

  • トリプタン系薬剤に関しては、催奇形性や胎児毒性の報告はありません。
  • どのトリプタンにおいても添付文書では、治療の有益性が危険性を上回るときのみ投与可とされています。
  • 妊娠中のトリプタン投与に関しては、スマトリプタンが最も多くのデータ集積があり、妊娠初期だけでなく、中期・後期も含めて有害事象の報告がありません。
  • そのため、アセトアミノフェンではコントロールできないような片頭痛に対しては、スマトリプタンが第一選択となります。

 

  • 嘔吐
  • 嘔吐がみられて制吐剤を使用する場合は、ドンペリドンは妊娠中禁忌(大量投与のラットで催奇形性の報告)なので、妊娠中禁忌ではないメトクロプラミドを使います。

 

片頭痛予防治療

  • 妊婦に対する片頭痛の予防治療は勧められていません。
  • そのため、予防治療中は避妊することが望ましいです。
  • ロメリジン(ミグシス)は添付文書上では妊婦に使用禁忌(大量投与の実験動物で障害の報告)です。
  • ヒトでの催奇形性や障害の報告はありませんが、服用中に万一妊娠した場合は服用を中止しましょう。
  • アミトリプチリン(トリプタノール)も妊娠中の服用は回避すべきです。
  • バルプロ酸はヒト胎児での催奇形性や胎内暴露によるIQの低下が示されています。
  • 妊娠の可能性がある場合は回避しましょう。
  • 妊娠中あるいは妊娠する可能性がある場合に、片頭痛の予防薬を投与する必要がある際はβ遮断剤(プロプラノロール)を使用しましょう。

 

いかがでしたでしょうか。

当院では毎日頭痛外来を行っております。
頭痛でお困りの方は是非一度お気軽に当院へご相談ください。
2025年01月22日