片頭痛は女性に多く、月〜年に数回不定期に起こる頭痛です。片頭痛の人口は10人に1人と言われています。最も頻度の高い30歳女性では約20%に達すると言われており、決して特別な病気ではありません。医療機関でしか処方できない薬もあるため、片頭痛でお悩みの方は、当クリニックまでご相談ください。
片頭痛について
・片頭痛はどうやって起こるの?
片頭痛は天候や睡眠の変化、体内ホルモンの変動、ストレスからの解放など心身のリズムが崩れた時に起きやすくなりますが、この働きに重要な役割を果たしているのがセロトニンです。セロトニンの分泌が低下することで三叉神経の興奮を引き起こし、血管拡張物質であるCGRPや炎症を起こすプロスタグランディンを放出し、脳血管の拡張と周囲の炎症を引き起こします。
身体を動かすと痛みがひどくなるのは、血行がよくなってしまい血管がさらに広がるからです。
特徴
- 片側あるいは両側のこめかみを中心とした痛み
- 痛みがズキンズキンと脈打つように痛む(拍動性)
- 持続時間が4〜72時間と比較的短い
- 動くと痛みが悪化する
- 寝込んだりして日常生活に支障がある
- 視界にキラキラとした光が見えたり(閃輝性暗点)、脱力やしびれが見られる
- 吐き気がしたり、吐いたりする
- 蛍光灯などの光がまぶしく感じたり、音がうるさく聞こえたり、においを不快に感じる
治療法について
片頭痛発作を早く和らげるための急性期治療と、片頭痛発作の頻度や程度を減らすための予防療法に分かれます。
急性期治療
軽症〜中等度の頭痛:アセトアミノフェン(カロナール)やNSAIDsであるロキソニン、イブプロフェン、バファリンなどの鎮痛剤が使われます。
中等度〜重度の頭痛:より効果的なトリプタン製剤が使われます。トリプタン製剤は、脳血管になるセロトニン受容体を刺激して、拡張してしまった血管を収縮させ、血管周囲にある三叉神経の刺激を防ぎます。さらに吐き気や嘔吐が見られる場合には制吐剤を用いることもあります。急性期治療は頭痛の始めで内服することが望ましく、内服のタイミングが遅れて痛みのピークを過ぎると、鎮痛の効果があまり実感できない場合もあります。
予防療法
片頭痛の発作が月に2回以上あるいは生活に支障をきたす頭痛が3日間以上続く場合には予防療法がすすめられます。予防薬として用いられる薬剤にはカルシウム拮抗薬(ロメリジン、ベラパミル)、β遮断薬(プロプラノロール、メトプロロール)、抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマート)、抗うつ薬(アミノトリプチン)などがあり、定期的に服用することで頭痛の発生頻度や程度を減らすことができます。
新たな片頭痛の治療薬(注射剤)
近年新しい片頭痛の予防薬が登場しました。片頭痛に関連しているCGRPという神経伝達物質をブロックして片頭痛の発作を起こさないようにする薬剤が日本でも使用できるようになりました。
当クリニックでも多くの患者さまが、頭痛の頻度と程度が軽くなり、日常生活が変わったことを実感されています。内服薬がほとんどいらなくなった方もおり、片頭痛の救世主として期待できる薬剤です。
当クリニックで処方している片頭痛の治療薬(注射剤)
商品名 |
投与方法 |
エムガルティ |
皮下注射を初回2本、その後1ヶ月毎に1本ずつ |
アジョビ |
皮下注射を4週間隔で1本ずつ、または12週間隔で3本ずつ |
対象者
※医師に片頭痛と診断されて、すでに生活改善や治療を行っている患者さまで、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている方。
※片頭痛が過去3ヶ月間で、平均して1ヶ月に4日以上。かつ従来の片頭痛予防薬の効果が不十分、または内服の継続が困難な場合。
片頭痛に対する頭痛薬の正しい使い方
1. 軽度から中等度であれば最初にNSAIDsを服用します。
当クリニックで処方しているNSAIDs
・ロキソニン
・カロナール
・ナイキサン
・SG顆粒
2. 中等度から重度の頭痛、あるいは軽度から中等度であってもNSAIDsの効果が乏しい場合にはトリプタン製剤やラスミジタンを使用します。
当クリニックで処方しているトリプタン製剤
商品名 |
効き目・持続性 |
副作用 |
イミグラン(スマトリプタン) |
効き目は早いが、持続性は乏しい。 |
悪心・嘔吐 |
マクサルト(リザトリプタン) |
効き目は早いが、持続性は乏しい。 |
喉や胸の圧迫感・締め付け感、息苦しさ、悪心・嘔吐、めまい |
ゾーミック(ゾルミトリプタン) |
効き目は早いが、持続性は乏しい。 |
喉や胸の圧迫感・締め付け感、息苦しさ、悪心・嘔吐、めまい |
アマージ(ナラトリプタン) |
効き目は遅いが持続性は高い。 |
喉や胸の圧迫感・締め付け感、息苦しさ、悪心・嘔吐、めまい |
レルパックス(エレトリプタン) |
効き目の早さ・持続性がほどほどにある。 |
– |
当クリニックで処方しているラスミジタン
商品名 |
効き目・持続性 |
副作用 |
レイボー |
服用するタイミングに影響されにくい。 |
めまい、傾眠、倦怠感 |
効果が不十分な時は追加での摂取が可能です。
商品名 |
服用方法 |
スマトリプタン、ゾルミトリプタン |
1回1錠で効果が不十分な場合は2時間以上の間隔をあけて追加服用ができます。ただし、1回最大2錠まで、1日最大4錠までです。 |
エレトリプタン |
1回1錠で効果が不十分な場合、2時間以上の間隔をあけて追加服用ができます。ただし、1回最大2錠まで、1日最大2錠までです。 |
リザトリプタン |
1回最大1錠までで、2時間以上の間隔をあけて追加服用ができます。1日最大2錠までです。 |
ナラトリプタン |
1回最大1錠までで、4時間以上の間隔をあけて追加服用ができます。1日最大2錠までです。 |
ラスミジタン |
服用した後にいったん痛みがなくなり、もし再び片頭痛による痛みが戻ってきた場合、再度服用できます。24時間で合計200㎎を超えないようにしてください。 |
3. トリプタン製剤やラスミジタンのいずれも単独で効果がなければ、トリプタン製剤やラスミジタンのいずれかとNSAIDsを併用します。
片頭痛の予防薬
効果が出るまでに2ヵ月ほどかかります。1,2週間でやめずに継続していくことが大事です。
片頭痛の発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合は、予防療法を検討します。
副作用が少ない低用量から開始し、2~3カ月程度の時間をかけて効果を判定します。
抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマート)
バルプロ酸:抗てんかん薬ですが、片頭痛の予防薬として効果があります。副作用として眠気があります。500〜600mg/日の内服が勧められます。
トピラマート:GABAの増強や神経細胞膜を安定させます。わが国では保険適用外です。
カルシウム拮抗薬(塩酸ロメリジン)
塩酸ロメリジン:脳血管の収縮抑制、血管透過性の改善効果がみられます。脳の血管に選択的に作用するため、血圧低下等はみられません。副作用として徐脈、心不全があります。
β遮断薬(プロプラノロール)
プロプラノロール:血管を拡張させることで予防効果がみられます。血圧の薬として使用されており、起立性調節性障害や低血圧の方には慎重投与となります。心不全、喘息、房室ブロックには禁忌。リザトリプタンとは併用禁忌となっています。妊娠中の片頭痛予防にも使えます。30mg/日から開始として30〜60mg/日で調整します。
抗うつ薬(アミトリプチン)
アミトリプチン:神経終末におけるノルアドレナリン、セロトニン再取り込みを阻害し、脳内のセロトニン濃度を上昇することで予防します。副作用として眠気、口渇、便秘があります。低用量(10〜20mg/日、就寝前)で使用します。
抗アレルギー薬(シプロヘプタジン)
シプロヘプタジン:抗アレルギー薬ではありますが、抗セロトニン作用によって、脳血管の収縮を抑え、頭痛発作の頻度を減少させます。特に年少者の片頭痛の発作予防に用いられることが多いです。発作予防の効果が現れるまでに少なくとも1〜2ヶ月はかかります。
漢方薬
呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散、葛根湯、五苓散などが慢性頭痛に効果があると言われています。
非薬物治療
- 片頭痛を引き起こす要因を特定して回避する
- 十分な休息をとり、健康的な睡眠パターンを保つ(早寝、早起き)
- 過度な運動は避けて、定期的に運動する
- ブルーライト(パソコン、スマホ、テレビ、ゲーム機)を制限する
- 禁煙を心がける
- カフェインを含む飲み物を控える(コーヒー・お茶・炭酸飲料・栄養ドリンクなど)
- マグネシウム(煎りごま・ひじき・玄米・大豆・海藻類)やビタミンB2(うなぎ、レバー、ほうれん草・納豆)を含む食品を摂るよう心がける
Q&A
- 片頭痛は遺伝しますか?
- 片頭痛の原因はまだ完全に解明はされていませんが、家族性に発症する傾向があり、片頭痛患者の3分の2は、肉親にも片頭痛患者がいます。
- 市販薬で治まるときは、市販薬の方がいいですか?
- 市販薬はドラッグストアで気軽に購入でき、頭痛があるときにすぐ飲むことができます。しかし、気軽に手に入りやすい分、薬物が手放せなくなり安心から乱用してしまう場合があります。市販薬は、多くが合剤であり、催眠鎮静薬やカフェインなど薬物依存が問題になる成分が含まれています。月に10日以上の使用が3ヶ月以上続いていると乱用状態になってしまうため、注意が必要です。
- 薬は飲まずに我慢した方がよいのでしょうか?
- 頭痛が出始めたら、我慢せずに早めに鎮痛薬を飲むことを勧めます。我慢することで痛み物質が蓄積して、炎症がおさまらず、ますます痛みが強くなります。痛みが強くなって鎮痛薬を飲んでも効かない可能性もあります。
当クリニックでは片頭痛発作治療薬エムガルティ、アジョビを採用しております。
治療薬のはたらき
片頭痛は、脳内にCGRPをいう物質が増え、脳の血管に作用して起こるといわれています。
治療薬は、CGRPのはたらきをおさえ、片頭痛発作が起こるのをおさえると考えられています。
内服薬による予防の治療と何が違う?
片頭痛の予防に使用される内服薬はCa拮抗薬(血圧を低下させる薬)、抗てんかん薬(けいれんを抑える薬)、β遮断薬(不整脈を抑える薬)、抗うつ薬など片頭痛発作を抑えるために作られた薬ではありません。
しかし、片頭痛予防注射製剤「抗CGRP関連製剤」は片頭痛発作を抑えるために開発された注射であり、予防効果はより強いものとなっています。
片頭痛が来ない日が増えたら…
片頭痛によって家庭、仕事、学校や職場で支障を感じている患者さまは多くいらっしゃいます。当院にも頭痛が起こることで仕事に集中できなかったり、頭痛のために仕事を休んでしまうとの相談が多数あります。また、頭痛がない日においても、集中力が低下したり、疲労感、イライラ感、頭痛が来るのではないかという恐怖があり、外出を控えてしまうなど日々の生活に多くの支障を抱えています。
片頭痛予防注射製剤「抗CGRP関連製剤」を投与することで、頭痛がある時だけではなく、頭痛がない時(発作間欠期)の支障も改善されることが期待できます。
期待できる効果
- 注射翌月より頭痛日数が約半分になる。
- 1ヶ月あたりの片頭痛日数が少なくなり、片頭痛の程度自体が軽くなる。
- 急性期治療薬(トリプタン)の使用日数が少なくなる、また、急性期治療薬の反応性が高まる。
治療方法
エムガルティ、アジョビともに1ヶ月に1本の頻度で注射します。
1ヶ月毎にクリニックで注射を行い、3ヶ月で効果があるか判定を行います。効果があるようであれば、在宅で自己注射していただくことが可能です。
自己注射と聞くととても不安に感じる方もいますが、多くの患者さん自己注射を行っており、慣れるまでは当院のスタッフがサポートされていただきますのでご安心ください。
症状が安定している場合は、3ヶ月処方も実施できるため、通院に縛られずに治療を実施できるメリットがあります。
副作用
よくみられる副作用は、注射を行った部位の反応(痛み、発赤、かゆみ、内出血、腫れなど)です。注射部位の反応は、多くの場合数日程度で消失します。
その他の副作用として皮膚のかゆみ、じんま疹、発疹などの報告がありますが頻度としては少ないです。
まれに重篤な過敏症(呼吸困難、のどが締め付けられるような感じ、動悸)が出現することがあります。その際はすみやかに医療機関を受診するようお願いします。
料金
薬剤費は、保険適応で1本 約13,000円(3割負担)です。
ご加入の保険によっては付加給付金制度があります。ご不明な点等ございましたら、お気軽に当院へご連絡ください。
付加給付金制度について
偏頭痛で日常生活に支障をきたしていませんか?治療の選択肢として片頭痛の予防治療薬(エムガルティ、アジョビ)を使用したいけれど、高額で医療費の負担が気になるなどお悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか?
付加給付制度のご紹介
付加給付金制度とは、健康保険組合の一部や共済組合が独自に定める制度です。
各組合が定めた限度額を超過した費用を付加給付として払い戻しがあります。
●付加給付(自己負担限度額)が25,000円のケース
エムガルティ在宅自己注射3か月分+診察と処方=合計窓口負担額が約50,000円の場合
1か月の合計窓口負担額 約50,000円 |
患者様の実質の負担分 25,000円 |
付加給付による払い戻し分 25,000円 |
ご加入の健康保険組合に付加給付制度があるのか、一度ご確認ください。
※国民健康保険や協会けんぽには、付加給付制度はありませんが、公的に利用できる制度として高額療養費制度や医療費控除があります。詳しくはスタッフにお尋ねください。
早期発見、予防のためにも定期的に脳の健康診断をおすすめしています。