こんにちは、毎日頭痛外来をしている福岡県糟屋郡新宮町の「しろうず脳神経外科」です。
みなさんは、CGRP製剤というものを知っていますか?CGRP製剤というのは2021年に片頭痛の新しい治療薬として日本で承認された注射薬です。日本で承認されてまだ長くないため、知らない方も多いかと思います。
片頭痛で悩まされている方にとっては、非常に有効な注射薬となっており、今まで頭痛が起きた時に対処するしかなかった時代から、頭痛が起きにくくする時代へと移行していきます。
今回は、CGRP製剤について詳しく解説していきます。
治療薬のはたらき
片頭痛は、脳内にCGRPをいう物質が増え、脳の血管に作用して起こるといわれています。
日本で承認された治療薬3剤(「エムガルティ®︎」「アジョビ®︎」「アイモビーク®︎」)であり、この注射薬がCGRPのはたらきをおさえ、片頭痛発作が起こるのをおさえると考えられています。
内服薬による予防の治療と何が違う?
片頭痛の予防に使用される内服薬はCa拮抗薬(血圧を低下させる薬)、抗てんかん薬(けいれんを抑える薬)、β遮断薬(不整脈を抑える薬)、抗うつ薬など片頭痛発作を抑えるために作られた薬ではありません。
しかし、片頭痛予防注射製剤「抗CGRP関連製剤」は片頭痛発作を抑えるために開発された注射であり、予防効果はより強いものとなっています。
片頭痛が来ない日が増えたら…
片頭痛によって家庭、仕事、学校や職場で支障を感じている患者さんは多くいらっしゃいます。
当院にも頭痛が起こることで仕事に集中できなかったり、頭痛のために仕事を休んでしまうとの相談が多数あります。
また、頭痛がない日においても、集中力が低下したり、疲労感、イライラ感、頭痛が来るのではないかという恐怖があり、外出を控えてしまうなど日々の生活に多くの支障を抱えています。
片頭痛予防注射製剤「抗CGRP関連製剤」を投与することで、頭痛がある時だけではなく、頭痛がない時(発作間欠期)の支障も改善されることが期待できます。
期待できる効果
・注射翌月より頭痛日数が約半分になる。
・1ヶ月あたりの片頭痛日数が少なくなり、片頭痛の程度自体が軽くなる。
・急性期治療薬(トリプタン)の使用日数が少なくなる、また、急性期治療薬の反応性が高まる。
治療方法
当院ではエムガルティ、アジョビを採用しています。エムガルティ、アジョビともに1ヶ月に1本の頻度で注射します。
1ヶ月毎にクリニックで注射を行い、3ヶ月で効果があるか判定を行います。効果があるようであれば、在宅で自己注射していただくことが可能です。
自己注射と聞くととても不安に感じる方もいますが、当院でも多くの患者さんが利用しております。
多くの患者さんが自己注射を行っており、慣れるまでは当院のスタッフがサポートされていただきますのでご安心ください。
症状が安定している場合は、3ヶ月処方も実施できるため、通院に縛られずに治療を実施できるメリットがあります。
副作用
よくみられる副作用は、注射を行った部位の反応(痛み、発赤、かゆみ、内出血、腫れなど)です。注射部位の反応は、多くの場合数日程度で消失します。
その他の副作用として皮膚のかゆみ、じんま疹、発疹などの報告がありますが頻度としては少ないです。
まれに重篤な過敏症(呼吸困難、のどが締め付けられるような感じ、動悸)が出現することがあります。その際はすみやかに医療機関を受診するようお願いします。
料金
CGRP製剤は保険適応となっています。薬剤費は、保険適応で1本 約13,000円(3割負担)です。
高額となりますが、片頭痛の方には非常に有効な治療薬となっています。加入の健康保険によっては付加給付制度というものがあります。
1か月の合計窓口負担額 約50,000円 | |
---|---|
患者様の実質の負担分 25,000円 | 付加給付による払い戻し分 25,000円 |