血の気が引くのはなぜ?迷走神経反射と原因になる他の疾患

こんにちは、毎日頭痛外来をしている福岡県糟屋郡新宮町の「しろうず脳神経外科」です。

 

電車に乗っているときや、学校で立って話を聞いているときなどに血の気が引く感じがあって倒れてしまうことがあります。

それは迷走神経反射が起こっていると考えられます。

今回は迷走神経反射について詳しく見ていきましょう。

 

迷走神経反射とは?

迷走神経というのは自律神経の一つの副交感神経に含まれます。

自律神経には交感神経副交感神経にわかれます。

交感神経は血圧を上げたり、心拍数を上げたりする働きがあります。

副交感神経は逆に血圧を下げたり、心拍数を下げたり、消化管の働きを活発にする働きがあります。

血管迷走神経反射とは、この副交感神経の働きが不適切な時に起きてしまうものです。

ストレスがかかると通常は交感神経の働きが活発化します。

しかし、ストレス時に副交感神経の働きが活発になることがあり、これを血管迷走神経反射といいます。

これにより、心拍数が減少したり血圧が低下したりして脳が貧血状態となります。

その結果、血の気が引く、気分が悪い、冷や汗、めまいなどの症状が数分間続き、最終的には失神に至ります。

失神は体を動かしている時や寝ている姿勢で起こることは少なく、立位や座位で同じ姿勢を維持しているときに発生しやすいです。

そのほかにも痛み、恐怖、ストレス、疲労、環境(人ごみの中、閉鎖空間)などが挙げられます。

脱水や塩分制限、飲酒、薬(α遮断薬、硝酸薬、利尿薬、カルシウム拮抗薬など)が誘因になることもあります。

 

血管迷走神経反射では、誘因となるものを避けることや、失神を回避する方法などの生活指導が基本となります。

また、誘因となる薬剤を使用している場合は、その薬剤の減量または中止を検討します。

その他の治療としては、起立調整訓練法、薬物療法、ペースメーカー治療などがあります。

 

血の気が引く原因になる他の疾患

貧血

一般的にいう貧血とは違い、脳貧血のことを指します。

脳貧血の原因として起立性低血圧が挙げられます。

起立性低血圧とは、寝ている状態から立ち上がったときに、収縮期血圧(最高血圧)が20mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が10mmHg以上低くなる場合のことを指します。

本態性と症候性に分類され、本態性は原因となる病気がないにも関わらず起立性低血圧が起こることを指します。

症候性は、糖尿病やパーキンソン病、多系統萎縮症、アルコール依存症、脱水症などの病気が原因となって起立性低血圧が起こることを指します。

まれに潜在的に癌があり、腫瘍に随伴して起立性低血圧が起こることがあります。

 

自律神経失調症

自律神経を構成する交感神経副交感神経の2つの神経のバランスが保たれている状態が正常となります。

しかし、ストレスが心身に影響を及ぼすと、この2つの神経のバランスが崩れ、不調となります。これが、自律神経失調症となります。

自律神経失調症の症状は、大きく分けて身体的症状と精神的症状の2つがあります。

身体的症状

自律神経失調症の主な身体的症状の一つが手足のしびれとなります。

ストレスの蓄積によって筋肉の硬直や血行不良を引き起こし、結果としてしびれ症状を出現させます。

しびれ以外にもめまい・耳鳴り、立ちくらみ、息切れ、慢性的なだるさ、便秘・下痢、手足の震え・しびれ、睡眠の質の低下、肩こり・頭痛などの症状が一時的ではなく、慢性的に発生します。

その身体的症状の一つに血の気が引く感じがみられることがあります。

精神的症状

自律神経失調症の精神症状は、パニック障害・不安障害・不安神経症などと症状が似ています。

イライラ、不安感、落ち着きがない、情緒不安定、やる気が起きない、緊張状態などの症状が出現します。

また、精神的症状が悪化すると、うつ病の併発リスクが高まります。

 

更年期障害

更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下してしまいます。

脳の視床下部からはエストロゲンを出してと指令しても、エストロゲンが出ないため、脳に混乱が生じて、自律神経のバランスが崩れてしまうことで精神症状が起こるとされています。

さらに、更年期の女性は、仕事や育児、介護など生活環境が大きく変化する時期でもあるため、精神的不調をきたしやすいのです。更年期障害ではさまざまな症状が現れ、その中の一つに血の気が引く感じが挙げられます。

 

起立性調節障害

起立性調節障害は自律神経がうまく働かなくなることで起きる病態です。

自律神経には血管の太さを縮めたり、拡張させたりする働きがあります。

この自律神経が働くことで、血管を収縮させて足の血液を心臓に押し戻してくれます。

この自律神経がうまく働かなくなってしまうと、起立時に血管が十分に収縮できず、足に溜まった血液を心臓に押し戻してくれなくなり、脳への血流を十分に維持することができなくなります。その結果血の気が引く感じが出現します。

 

パニック障害

パニック障害にはパニック発作、予期不安、広場恐怖という3つの特徴的な症候があります。

パニック発作

パニック発作の特徴は、前ぶれのない突然の発作が起こることです。多くの場合10分以内でピークに達し、通常30分以内でおさまります。症状としては、胸がドキドキする、冷や汗をかく、身体や手足の震え、呼吸が早くなる、息が詰まる、胸の痛みや不快感、吐き気、めまい、ふらつき、非現実感、死の恐怖、しびれやうずき感などが挙げられます。

予期不安

パニック発作を一度経験すると、またあの恐ろしい発作が起きるのではないかという不安感が生じます。パニック発作にはこの予期不安が必ず伴い、発作を繰り返すほどにこの不安がさらに強くなっていき症状を悪化させていきます。

広場恐怖

パニック発作を経験した人が特定の場所や状況を避けるようになることを広場恐怖といいます。過去にパニック発作の起きた場所で、もう一度そこへ行くと発作が起きるのではないかと思い、避けるようになります。

 

いかがでしたでしょうか。血の気が引いて意識が遠のくことがあります。

脳腫瘍などが原因となっている可能性もあるため、血の気が引くような症状がみられる方は一度当院までご相談ください。

 

2025年06月05日